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治療の選択、彼女の事情

1月6日に急性胃腸炎を発症したゆき。
3週間以上が経過しようやく快方に向かいつつある今、
今回のことについて少しまとめておこうという気になれました。

繰り返す嘔吐と下痢(しかも血便混じり)、食欲不振が主な症状。
見逃してはならない病気としてとっさに思いついたのが
①急性膵炎、②リンパ管拡張症と続発する蛋白漏出性腸炎、③消化器型リンパ腫、④誤飲
IBD(炎症性腸疾患)も長期に渡れば怖い病気ですが、こればかりはある程度経過を見ないとわかりません。
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上記に挙げた病気は初期治療を誤ると致命的にもなることから、
まずはこれらの病気の存在を見極めるところからスタートしました。
血液検査及び腹部超音波検査とX線撮影を行い、

アミラーゼ、GOT、GPT、LDHいずれも著明な上昇無し→膵炎は否定的
炎症反応の上昇無し、白血球数正常、赤血球濃縮無し→膵炎は否定的
血中アルブミン正常、腸管浮腫無し、腹水貯留無し→この時点での蛋白漏出性腸炎は否定的
LDH正常、貧血無し、腹腔内リンパ節の腫れは認めず→消化器型リンパ腫は否定的
腸管の異常な拡張像無し、通過障害無し→誤飲は否定的

もちろん②及び③の確定診断を下すためには開腹しての生検が必要で
もしかしたら今後その可能性も無いとは言えませんが、
現時点では回避できそうです。
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以上の結果を踏まえ、
病気の頻度から考えても最も疑わしいのは急性腸炎。
ある意味時間が解決する病気とはいえ、次に頭を悩ませたのが治療について。
ゆきは嘔吐・下痢共に回数が多かったため点滴も考慮したいところでしたが、
ここで忘れてはいけないのが心不全の存在です。
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ゆきは僧帽弁閉鎖不全症から左心不全を来し、
進行した左心不全から肺うっ血と右心不全を続発しており、
心不全末期の状態である「うっ血性心不全」まで待ったなしの状態。

心不全というのは要するに心臓のポンプ機能が衰えてしまうもので、
全身への血液循環が滞って余剰な水分が体の末梢及び肺に貯留してしまい、
全身の浮腫や腹水の貯留、肺に水が溜まって呼吸不全を来す肺水腫といった病態を引き起こします。
それゆえ心不全の治療には利尿剤を用いて余剰な水分を体外に排出し、
できればちょっと脱水気味に体の水分コントロールを持っていくのがセオリーです。
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ゆきの循環血液量はおよそ200mlです。
過剰な輸液はすぐに心臓への負担となり、
彼女の場合は容易に肺水腫を引き起こしてしまう。
皮膚をつまんで弾力性が保たれている(皺が寄らない)、口腔粘膜が乾燥していない、
血液検査では尿素窒素の上昇が無く、電解質のバランスは正常、赤血球濃縮も無し。
よってただちに輸液を要するほどの脱水は無いと考えられ、内服中心の治療を選択しました。

無論これは心不全が背景にあるが故の選択であり、
無論今後の経過によっては新たな選択肢を考えるかもしれませんが。
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今回のゆきの病状と治療について
点滴を行わないことや回復に時間を要したことでやきもきなさった方もいらっしゃるかもしれません。
早くに自分の考えを書けば良かったのですが、なにぶん経過が流動的であり
「もしかしたら開腹・生検も有り得るか?」等と考える内にタイミングを逸してしまいました。
分かって頂きたかったのは、決して手をこまねいて傍観していたわけではなく。
ただ、適切なタイミングで的確に事態の経過をまとめることが出来なかった。
自分の不甲斐なさ故に多くの方々にご心配をおかけしてしまったこと、ここに深くお詫び申し上げます。
何だかすごい長文になってしまったことも本当にすみません……。

木曜日は嘔吐も血便も下痢もありませんでした。
まだ少し軟便気味でしたが、食欲は旺盛で不快感を訴えることもありません。
あとひと息だ、おちびちゃん。


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by monchuchu0116 | 2015-01-30 05:30 | 病院・病気 | Comments(0)